「取調べでは記憶にないことも肯定した」村上ファンド事件証人・滝沢 建也氏への弁護側反対尋問

「取調べでは記憶にないことも肯定した」村上ファンド事件証人・滝沢 建也氏への弁護側反対尋問

取調べ

  • 平成 18 (2006) 年 6 月 5 日に、村上 世彰被告(M & A コンサルティング前代表)が記者会見を行った
  • 取調べで、記者会見の内容について聞かれた
    • 「『ライブドアの意向は聞いたが、村上ファンドの購入とは無関係』と言っていたけれど、ライブドアを意識していたことは間違いないよね」と言われた
      • 罪は認めたが因果関係は認めていない、という意味だろう
      • 「検察の幹部が、『記者会見は行きすぎだった』と話している」とも聞いた
      • 「村上ファンドは、ライブドアを意識していた」という内容の供述調書に署名した
  • 取調べ期間に、シンガポールへ行った
    • 6 月 10 日すぎに 2 泊 3 日
    • MAC ASSET MANAGEMENT PTE, LTD の代表者が逮捕されたので、検察の同意を得てシンガポールの金融庁に事情説明を行った
  • 6 月 15 日の取調べで、平成 16 (2004) 年 11 月 8 日のライブドアとの打合せについて聞かれた
    • 吉開 多一検事が上司からネジを巻かれた印象を受けた
    • 吉開検事は、「切腹できない人には、周りが介錯する必要がある」と言った
      • 前者は村上被告で、後者は丸木 強氏(M & A コンサルティング代表取締役)や証人と受止めた
  • 6 月 16, 17, 18 日の取調べは、厳しかった
    • 吉開検事は紳士的だったので感謝しているが、長時間に及んだ
      • 激しい言葉の応酬もあった
    • 吉開検事は、「証人の供述調書は不満なんです。今だと 60 点くらいです」「6 月 4 日の供述調書を取らなければよかった」「資金調達の話と証人の独自の記憶が欲しい」「人質手法と言われるかもしれないけれど、みんな逮捕しておけばよかった」と話した
    • 「お望み通りに自白しているじゃないですか」と述べると、「これでは自白したことにならないから、資金調達を認めろ」と返された
      • 「自白しない限り、村上被告は保釈にならないよ」と言われ、忍びなく耐え難かった
    • 吉開検事は、「在宅起訴することもできる」「8 月まで連日取調べを行うこともできる」とも言った
      • 「8 月まで連日」は、余罪を見付ける、という意味だろう
    • 吉開検事がパソコンに向かっている 2 時間くらいの間は、放置された

ストラテジック・バイヤーとストラテジック・パティシパント

  • 「ストラテジック・バイヤー」とは、金融用語で「発行済株式数の大きな割合を取得して、経営権掌握を目指す者」だが、「プロキシー・ファイトの援軍」の意味で使ったこともある
  • 「プロキシー・ファイトの援軍」を表す用語として「ストラテジック・パティシパント」を考案したが、平成 16 (2004) 年 7 月 28 日の取締役会の資料で使っただけ
    • "strategic participant" という英語表現があるかは知らない
      • 「ストラテジック・パティシパント」は馴染みがない上に長いので、他の者は使わず、証人もほとんど使っていない
    • コンテンツ・サービス会社フェイスとライブドアとリップルウッドを「ストラテジック・パティシパント」とした
    • 「R 社」は楽天を指し、フェイス・ライブドア・リップルウッドと区別するために「ストラテジック・バイヤー」「ストラテジック・パティシパント」を使い分けている
      • 楽天は、大きな割合を取得する可能性があった
    • 議事録で「R 社のようなストラテジック・バイヤー」とあるのは、金融用語の「ストラテジック・バイヤー」
    • この時点では、以下の出口戦略を考えていた
      1. フジテレビによる TOB
      2. プロキシー・ファイトで、取締役の過半数を選任
  • 「平成 16 (2004) 年 11 月 00 日 ニッポン放送への対処方針について」という資料の「ストラテジック・バイヤー」は、「プロキシー・ファイトの援軍」の意味
  • 平成 18 (2006) 年 6 月 18 日の供述調書に、「楽天はニッポン放送の事業や子会社を取得する目的だったので、『ストラテジック・バイヤー』と呼んでいた」とある
    • 楽天とライブドアは全く違う、と考えていた
      • 三木谷 浩史氏(楽天会長兼社長)は日枝 久氏(フジテレビ会長)と人間関係が良好で、鹿内 宏明氏(フジサンケイグループ元議長)とも付合いがあるので、友好的に資本参加できる
      • 村上被告も、同じ認識だった
  • 平成 16 (2004) 年 6 月 23 日の取締役会で、楽天・フェイス・ライブドア・リップルウッドの名前が挙がった
    • 楽天と楽天以外は、同格ではない
      • ライブドアはフェイスやリップルウッドと同格で、ニッポン放送の子会社に興味があるので 1 〜 2 % を取得する
    • 村上被告の指示で、リップルウッドの日本コロムビア株式会社担当の杉本氏と何度か打合せを行った
      • 村上被告も同席して、購入を薦めた
    • 平澤 創氏(フェイス代表取締役社長)が来社したときに、たまたま証人がいたので若干説明した
  • 9 月 14 日の取締役会の資料「ニッポン放送の現状について」は、石井 賢史氏(M & A コンサルティング取締役)が起案した
    • 証人が担当している案件の資料は、事前にメールで送られるか印刷して見せられるので、このときも読んでいた可能性が高い
    • 「今後の方策」に、「4. いずれにしても当方の負けはなくなったので、来年の定時株主総会に向けてニッポン放送株を買増す。更に、ストラテジック・バイヤーにも購入を働き掛ける」とある
      • 「ストラテジック・バイヤー」は、「プロキシー・ファイトの援軍」の意味
      • 1 文目と 2 文目は、独立した選択肢ではない
  • 10 月 28 日の取締役会で、ニッポン放送が話題に上がった
    • (「10 月 20 日の塩野 誠氏(ライブドア証券取締役副社長)からトリイ ジュンコ(表記不明)氏(M & A コンサルティング元社員)へのメールに、『買収資金の借入が可能になったので、打合せを行いたい』とある」との弁護側に対し)ライブドアの名前は出なかった、と思う
    • 資料「ニッポン放送の現状について」の「今後の方策」は、9 月 14 日と同じ内容

ライブドアとの打合せ

  • 11 月 8 日に、ライブドアと打合せを行った
    • 少し前に、村上被告から「ライブドアにニッポン放送株の 1/3 取得を促している。外国人株主について説明してくれ」と言われたので、出席した
      • (「平成 18 (2006) 年 6 月 20 日の供述調書に、『1/3 は実現するには大きいが、堀江 貴文被告(ライブドア前社長)に 5 % 程度で提案しても動かない、と読んで大きく持掛けたのだろう』とある」との弁護側に対し)その通り
      • (「6 月 20 日の供述調書に、『村上被告も証人も暇ではないので、夢物語の打合せには出ない。ライブドアがストラテジック・バイヤーになる可能性が高いから、出席した』とある」との弁護側に対し)当時の認識とは異なったが、検察官に下書きを見せられて従った
      • ストラテジック・バイヤーは事業に興味があって株式を売却しないから、少しでも可能性があれば相当の時間を費やしても構わなかった
      • リップルウッドはニッポン放送株を購入しなかったが、村上被告と証人は打合せに出席した
    • 村上被告は「プロ野球惜しかったね」と切出して、ニッポン放送や子会社の魅力を語った
    • 村上被告は「外国人株主は高ければ売却する」と言ったが、証人は「目標株価があるから、そう簡単ではない」と強く否定した
      • ライブドアの出席者は、2 人が喧嘩しているように感じたかもしれない
      • (「6 月 20 日の供述調書に、『外国人株主は高ければ売却する、と証人が述べた』とある」との弁護側に対し)間違っているが、検察の主張を認めることに決めていたので、細部には文句を言わなかった
    • 絶対に出なかったとは言い切れないが、資金調達の話が出た記憶はない
      • 取調べで、資金調達については譲らなかった
        1. 6 月 4 日の供述調書で、資金調達に触れていなかった
        2. 吉開検事が、「重要な争点」と言っていた
      • 川原 史郎弁護士に相談すると、「記憶がなければ、客観的に供述するための書類を作成しよう」と言われ、持参して吉開検事に見せると、ほぼその通りに供述調書になった
      • (「6 月 20 日の供述調書に、『村上被告がどこまで資金調達できているか聞いた記憶はないが、宮内 亮治被告(ライブドア元取締役)が 200 〜 300 億円の目途が付いた話をしたことも否定できません』とある」との弁護側に対し)膠着状態を打開するために、折合った
      • (「6 月 20 日の供述調書に、『ライブドア側は真剣にニッポン放送を取得しようとしていて、資金調達を頑張ります、と言った』とある」との弁護側に対し)記憶とは異なったが、細かい点に異議を唱えなかった
      • (「6 月 20 日の供述調書に、『弁護士にインサイダー取引にならないか相談すべきだった。コンプライアンスを担当していた証人の落ち度で、悔やんでも悔やみ切れない』とある」との弁護側に対し)全く後悔していなかった
      • インサイダー取引にならないか不安に思ったら、中島 章智弁護士(MAC アセットマネジメント取締役)にすぐ電話していたが、このときは必要性を感じなかった
      • 吉開検事に「認めることにしたんだから、これでいいんです」と言われ、「吉開検事だったら、弁護士に相談しますか?」と聞くと、「判例を正しく理解していなければ、しなかったかもしれません」との返答だった
    • (「6 月 20 日の供述調書に、『村上ファンドがニッポン放送株を買増していることは、ライブドア側に伝えなかった』とある」との弁護側に対し)取調べで話していないが、供述調書の下書きにあるのを訂正しなかった
    • (「6 月 4 日の供述調書に、『打合せ終了後、ライブドアがストラテジック・バイヤーになればカードが 1 枚増えるね、と言うと、村上被告は笑っていた』とある」との弁護側に対し)吉開検事にどう表現するか聞かれて答えたので、2 人の合作
      • 6 月 20 日の供述調書にも、同じ表現がある
    • 堀江被告と面識はあったが、打合せは初めてだった
      • 打合せ中にスライド式携帯電話でメールを確認していたので、真面目にやる気あるのかな、と感じた
    • 宮内被告から、ニッポン放送をどうしたいという願望は伝わらなかった
      • 「ニッポン放送いいですね」とお世辞を言うくらい
      • 村上被告と堀江被告の掛合漫才に、茶々を入れていた
    • 中村 長也被告(ライブドアファイナンス前社長)は、一切口を開かなかった
    • 塩野氏の発言は、「村上ファンドが他に売却しない契約をしてくれ」のみ
    • 石井氏とトリイ氏は、発言しなかった
    • M & A コンサルティングの入口かエレベーター前まで、ライブドアの出席者を見送った
    • 打合せ終了後、村上ファンド内でライブドアの話はなかった、と思う
      • 重要な話があれば、村上被告は召集を掛けて情報を共有し、次の資料の作成を命じる
    • 打合せの感想は、「徒労」「時間の無駄」「取るに足りない」

ニッポン放送株の出口戦略

  • 平成 16 (2004) 年 12 月 6 日に、取締役会を行った
    • 資料「ニッポン放送の現状について」を作成したのは、石井氏だろう
      • 事前に、確認しただろう
    • フジテレビが TOB するかどうかを検討した
    • ライブドアへの言及は全くなかった、と思う
      • 11 月 8 日のライブドアとの打合せが供述調書の通りなら、議題にならないことはあり得ない
  • 平成 17 (2005) 年 1 月 4 日に、「ニッポン放送についての論点整理」を作成した
    • 1 月 3 日に、村上被告から「今年はニッポン放送がメインだから、論点を整理してくれ」と言われた
      • 2 人で電話で話した内容をまとめた
      • 村上被告・丸木氏・証人・石井氏用の社内資料
    • 「2. 今後、どこまで買い進むか」に、以下のようにある
      1. 「現状では 18.8 % 前後」
      2. 「MAC スモールキャップ投資事業組合で、どのくらい購入するか」
      3. 「青山 浩氏(M & A コンサルティング元社員)のファンドの 50 億円は、すぐに購入できる状態か」
      4. 「L 社はどこまで購入するか」
    • 「L 社」はライブドア
    • 1, 2 だけを書いて村上被告に見せたら、3, 4 を追加するように指示された
      • 証人がライブドアを入れなかったのは、平成 16 (2004) 年 11 月 8 日の打合せは夢物語だったからで、隠す必要があったのではない
      • 3, 4 は、「プロキシー・ファイトの援軍」として同列と受止めた
  • 平成 17 (2005) 年 1 月 6 日に、ライブドアと打合せを行った
    • (「平成 18 (2006) 年 6 月 20 日の供述調書に、『ライブドア側が、TOB とエクイティ(株式)による 500 億円くらいの資金調達の準備ができたことを伝えた』とある」との弁護側に対し)記憶になかったが、検察官に「ライブドアが『言った』と言っているから、言ったんでしょ」と言われ、争わなかった
  • 平成 17 (2005) 年 1 月 7 日に、鹿内家がニッポン放送株の 8 〜 9 % を大和証券 SMBC に売却したことを公表した
    • 鹿内家にはニッポン放送の株主総会で経営陣には賛成せず、村上ファンドに賛成するか棄権してほしかった
      • プロキシー・ファイトが厳しくなる
    • 夜遅くまで村上被告・証人・石井氏で対策を練った
      • 村上被告が相当慌てていたので、これはまずいな、と感じた
      • 日枝氏は、翌朝からハワイへ行くことになっていた
      • フジテレビがニッポン放送と株式交換をすることを提案する旨のパワーポイント資料を作成して、石井氏が日枝氏の自宅の郵便受けに入れた
    • 1 月 6 日の打合せでライブドア側が真剣であれば、日枝氏とは別に TOB のスケジュールを作成しているはずだが、検討していない

金融知識

  • 警察庁からボストンコンサルティンググループ/在日米国大使館政治顧問を経て、M & A コンサルティングに参加した
    • 金融や M & A の知識はなかったが、馳せ参じた
    • M & A コンサルティングで、知識を身に付けた

ニッポン放送株の出口戦略

  • 平成 16 (2004) 年 7 月 2 日付の三木谷氏へ向けた資料では、2 つの選択肢が記載されている
    • 1 つ目は友好的買収だが、2 つ目も敵対的買収ではない
      • 2 つ目は、楽天が主体となってニッポン放送の経営権掌握を目指すのではない
      • どのストラテジック・バイヤーに対しても、敵対的買収は意識していない
  • 11 月上旬に、「平成 16 (2004) 年 11 月 00 日 ニッポン放送への対処方針について」という資料を作成した
    • 2 ページ目に、村上ファンドの方策が示されている
      • フジテレビが動く場合と動かない場合を想定しているが、ライブドアには触れていない
      • 「TOB 価格が 6000 円以下であれば、市場で買増す。サウスイースタン・アセット・マネージメントや鹿内家と連繋して、オーバー・ビッドなど検討」とあり、ライブドアの名前がない
    • 3 ページ目に、フェイスや USEN や GMO インターネットが挙がっており、購入を促すことを考えていた
    • ニッポン放送の取締役候補者が挙げられている
      • 「組閣名簿」と呼んでいた
      • フェイス/GMO インターネット/ウッドランドなどの関係者や東京大学法学部時代に同級生だった参議院議員の名前があり、最後に堀江被告や宇野 康秀氏(USEN 社長)の名前がある
      • 堀江被告がニッポン放送に興味を示していることは分かっていたので、補欠として入れた
  • 4 月から平成 17 (2005) 年 1 月 4 日までの丸木氏・証人・石井氏の作成資料に、「ライブドアが、ニッポン放送の経営権を掌握する」としたものはないだろう
    • 少しでも可能性があれば、資料を作成して当事者に提案する
  • 1 月 17 日に、フジテレビが「5950 円でニッポン放送を TOB する」と発表した
    • 村上ファンドは、歓迎する内容のプレスリリースをインターネットに 1 時間くらい掲載した
      • 1 月 6 日の打合せでライブドアから資金調達の話があれば、プレスリリースを作成しない

供述調書

  • 平成 18 (2006) 年 6 月 4 日の供述調書に、「平成 16 (2004) 年 11 月 8 日以前に、村上被告から『ライブドアがニッポン放送株の 30 数 % を取得する』と聞いた」とある
    • 6 月 5 日以降の供述調書には、同趣旨の記述がない
    • 6 月 20 日の供述調書には、「11 月 8 日に、村上被告から『ライブドアも頑張っているみたいだ。堀江被告が若い人を連れて来るから、外国人投資家について説明してくれ。ライブドアが 1/3 を購入すれば、村上ファンドの分と合わせてフジテレビを取得できる。1/3 は外国人投資家から購入するしかない』と言われた」とある
      • この会話で、初めて村上被告がライブドアに働き掛けていたことを知った

脱税

  • 平成 16 (2004) 年 2 月 12 日に、東京地方裁判所で敗訴した
    • 平成 10 (1998) 年頃の在日米国大使館職員 250 人くらいを対象に税務調査が行われ、大部分は過少申告分の所得税を払った
    • 更正処分の訂正を求めて不服申立てを行ったのは、証人ともう 1 人のみ
      • 2 人とも最高裁判所まで争ったが敗訴
      • 重加算税は課されていない