「脱税で敗訴後もコンプライアンス担当」村上ファンド事件証人・滝沢 建也氏への検察側主尋問

「脱税で敗訴後もコンプライアンス担当」村上ファンド事件証人・滝沢 建也氏への検察側主尋問

証人の経歴

  • 昭和 59 (1984) 年、東京大学法学部を卒業して警察庁に入庁
    • 昭和 62 (1987) 年 7 月、スタンフォード大学経営学大学院に留学
      • 平成 1 (1989) 年 6 月、修了
    • 薬物対策課課長補佐や埼玉県警捜査二課課長などを経て、選挙違反や省庁収賄などを担当
      • 被疑者取調べは、入庁直後の大阪府警で 2, 3 回のみ
    • 平成 4 (1992) 年 10 月、退庁
      • 留学期間を除き 6 年半(留学後は 3 年間)勤務して、警察庁でやるべき仕事を終えたから
  • 平成 4 (1992) 年、ボストンコンサルティンググループに入社
  • 平成 6 (1994) 年 10 月、在日米国大使館政治顧問に就任
  • 平成 11 (1999) 年 8 月、M & A コンサルティング代表取締役に就任
    • 6 月の M & A コンサルティング設立直後から、証人の妻が監査役に就任
      • 報酬の有無は、覚えていない
    • 平成 12 (2000) 年 1 月、M & A コンサルティング取締役に就任
    • コンプライアンスを担当

脱税

  • 平成 16 (2004) 年 2 月 12 日に、東京地方裁判所で敗訴した
    • 在日米国大使館政治顧問を務めていた時期の確定申告の過少申告
      • 在日米国大使館からの平成 6 (1994) 年の収入の全額/その後も半額程度を申告しなかったため、「偽りその他不正な行為」と認定された
    • 訴訟代理人は中島 章智弁護士(MAC アセットマネジメント取締役)
    • 6 月 8 日に控訴が棄却され、最高裁判所で敗訴が確定した
  • コンプライアンス担当取締役が敗訴しても、M & A コンサルティングは体制を変更しなかった

ニッポン放送株の出口戦略

  • 平成 16 (2004) 年 1 月までは、鹿内家やサウスイースタン・アセット・マネージメントと SPC を設立後、取締役の過半数を選任して経営権を掌握することを考えていた
    • 平成 13 (2001) 年 1 月 14 日付の「ご参考資料」は鹿内家に向けたもので、「3 者で約 30 %」「あと 19.6 %」とある
    • 村上ファンドは、サウスイースタン・アセット・マネージメントの名義書換未了株 9.2 % を購入する
    • ニッポン放送株の取得資金は、3 者が SPC に 150 億円を出資する
    • SPC のニッポン放送株を担保に銀行から融資を受けて、過半数か 2/3 を取得する
      • 融資金額は、それぞれ 278 億円と 523 億円
    • 「70 % 掛け目の担保力を利用した資金調達」とある
      • 通常 50 〜 70 % だから
      • 「70 %」を選んだのは村上 世彰被告(M & A コンサルティング前代表)か丸木 強氏(M & A コンサルティング代表取締役)で、証人ではないだろう
    • 経営権掌握後にニッポン放送の資産を売却して、銀行に借入金を返済する
    • 「所有しているニッポン放送株と、現金 150 億円で取得するニッポン放送株を担保に融資を受け、更にニッポン放送株を購入する」は、後にライブドアが検討する手段で不合理ではない
  • 平成 16 (2004) 年 2 月 3 日に、「フジテレビがニッポン放送を 100 % 子会社化することを目指した場合、5000 円を超える株価で売却する」「5000 円以下の TOB は阻止して、社外取締役選任の株主提案を行う」と方針を決めた
    • ニッポン放送株の平均取得株価は、3700 円くらいだった
    • プロキシー・ファイトを行う場合の目的は、経営権掌握ではなく社外取締役選任
      • 全取締役を改選する年ではなかった
  • 3 月頃は、フジテレビがニッポン放送を子会社化することを期待していた
    1. フジテレビによる TOB
    2. フジテレビ株との株式交換
  • 3 月末には、ニッポン放送株を約 380 万株 (11.62 %) 取得していた
    • 「N 社について」で「約 17.71 %」になっているのは、村上ファンド名義の株と外国人株主の名義書換未了株を株式交換したから
      • 放送法により、外国人株主は 20 % を超える分の株式を名義書換できない
      • 株式交換後も外国人株主のニッポン放送株は村上ファンド名義のままなので、議決権ベースでは約 200 万株 (6 %) 増えることになる
    • 9 月 13 日付の資料は、中島弁護士の助言を受けて証人が作成した
      • 実質的株主でない村上ファンドが議決権を行使することについて、ニッポン放送が問題にした場合の対策を記した
      • (「株主価値を標榜する村上ファンドが、株式交換済の議決権を行使していいのか?」との検察側に対し)外国人株主と議決権行使について契約をしているので、コンプライアンス上の問題はない
      • (「議決権について、大量保有報告書で開示していない」との検察側に対し)気付かなかった
  • 4 月に、ニッポン放送に対して「村上被告・丸木氏・証人を社外取締役とする」という株主提案を行った
    • 経営権掌握ではなく、フジテレビとの資本のねじれを正すことが目的
  • 6 月 23 日に、取締役会を行った
    • M & A コンサルティングでは議事録を保管しておらず、オリックスの木村 司氏(M & A コンサルティング前社外取締役)から入手したので、書込みがある
    • 楽天とコンテンツ・サービス会社フェイスとライブドアとリップルウッドの名前が挙がった
      • 三木谷 浩史氏(楽天会長兼社長)は日枝 久氏(フジテレビ会長)と親しく、鹿内 宏明氏(フジサンケイグループ元議長)も日本興業銀行の先輩なので、唯一友好的になり得た
      • フェイスとライブドアとリップルウッドは、ニッポン放送の保有資産や事業会社が目的だった
    • 議事録に、「ライブドアがフジテレビを欲しがっている」とある
      • フェイスは、フジテレビよりもポニーキャニオンのコンテンツに興味を示した
      • 「リップルウッドがフジテレビを欲しがっている」という説明があったか記憶にない
  • 6 月頃は、楽天が 1/3 くらいを取得してストラテジック・バイヤーになることを想定していた
    • 村上ファンドの取得分を楽天に売却する
      • 友好的だから、TOB のオーバー・ビッドは期待していない
    • 楽天はストラテジック・バイヤーで、フェイスとライブドアとリップルウッドはストラテジック・パティシパント
      • 「ストラテジック・バイヤー strategic buyer」は、金融用語で「事業戦略として、発行済株式数の 1/3 や過半数を取得する株主」
      • 「フィナンシャル・バイヤー financial buyer」は、金融用語で「投資目的で、発行済株式数の 1/3 や過半数を取得する株主」
      • 「ストラテジック・パティシパント strategic participant」は、証人の造語で「事業戦略として、発行済株式数の数 % を取得する援軍の株主」だが、外部には説明していない
  • 7 月 2 日付の三木谷氏へ向けた資料では、友好的買収と敵対的買収を記載している
    • 村上ファンドが仕掛けて、楽天がホワイトナイトとして登場する可能性も排除していなかった
    • TOB 合戦の可能性もあるが、想定していなかった
      • 実際は、ニッポン放送やフジテレビに対して敵対的買収を行う会社は考えられなかった
    • 「ストラテジック・バイヤーは戦略の 1 つ」ではなく、「楽天は戦略の 1 つ」と捉えていた
    • (「当時の村上ファンドの取得率は 11.8 % なのに、『30 % を楽天に売却する』とある」との検察側に対し)サウスイースタン・アセット・マネージメントやピーター・キャンディル・アンド・アソシエイツとの合計
      • 村上被告が言ったのだろう
      • (「6 月 23 日の取締役会議事録に、『サウスイースタン・アセット・マネージメントとピーター・キャンディル・アンド・アソシエイツは、夏の間に売却したがっている』とある」との検察側に対し)「夏の間」はともかく、痺れを切らしていた
  • 7 月 28 日に、取締役会を行った
    • 資料「N 社の現状と弊社の選択肢」が配布された
      1. 「来年の株主総会で、全取締役選任を目標とする」
      2. 「R 社のようなストラテジック・バイヤーが TOB や第三者割当で 20 〜 30 % を取得することもあり得る」
    • 「R 社」は楽天
    • 1 は敵対的買収だが、フジテレビに根回しは行う
    • 2 は敵対的買収でなければ考えられる

ライブドアとの打合せ

  • 9 月 15 日に、ライブドアと打合せを行った
    • 村上被告がライブドアへ行き、堀江 貴文被告(ライブドア前社長)と宮内 亮治被告(ライブドア元取締役)にニッポン放送株を推奨した
    • 9 月に楽天に断られたから、ライブドアに持掛けたのではない
      • 楽天はストラテジック・バイヤーで、フェイスとライブドアとリップルウッドはストラテジック・パティシパントだから別物
  • 村上被告が戻ってすぐに、ニッポン放送についての会議を行った
    • 村上被告は、「ライブドアは、横浜ベイスターズに興味を示して盛上っていた」と話した
    • フジテレビについては、覚えていない
      • (「一番の売りは、フジテレビではないのか?」との検察側に対し)必ずしもそうではない
    • 村上被告が「堀江被告は本気だ」と言ったか覚えていない
  • 10 月 20 日に、ニッポン放送株を 24 万株購入するために、メロンの投資制限を引上げた
    • 出資者には、「ライブドアがストラテジック・バイヤー」とメールを送信した
      • 「ストラテジック・パティシパント」は、証人の造語だから
  • 11 月 8 日 15 時 30 分に、M & A コンサルティングの会議室でライブドアと打合せを行った
    • ライブドア側の出席者は、堀江被告・宮内被告・中村 長也被告(ライブドアファイナンス前社長)・塩野 誠氏(ライブドア証券取締役副社長)
      • 堀江被告以外とは初対面
    • 村上ファンド側の出席者は、村上被告・証人・石井 賢史氏(M & A コンサルティング取締役)・トリイ ジュンコ(表記不明)氏(M & A コンサルティング元社員)
    • トリイ氏から打合せの予定は聞いたと思うが、「ライブドアに説明する外国人投資家はどうなっていますか?」とは聞かれていない
    • 打合せの直前に、村上被告に「堀江被告が若い人を連れて来るから、外国人投資家について説明してくれ」と言われた
      • 「若い人」とは、塩野氏のことだろう
      • 「どうしてライブドアに説明するの?」と尋ねると、「『1/3 取れ』と言わないと駄目だから」と答えた
    • 村上被告が、「N 社について」に沿って説明した
      • 「株主がばらけているから購入しやすい」「持合も少ない」とセールストークで発破を掛けていた
      • 鹿内家について、どう説明したか覚えていない
      • 「場で買え」とは言わなかったか、言ったとしても「1 % でも購入してくれ」という意味
      • 「村上ファンドも買増している」と言ったか覚えていないが、通常は言わない
      • 堀江被告に「TOB はどうですかね?」と聞かれ、不動産会社昭栄の経験談をした
    • 証人が、「外国人株主は 30 % くらい取得している」と話した
      • 最新情報をエクセルで印刷して見せながら、「こことここは紹介できる」と述べた
      • 村上被告が「外国人株主は高ければ売却する」と言い、証人が「そんなに甘くない。目標株価以上でなければ、売却しない」と返したので、不仲と思われたかもしれない
      • 村上ファンドの約 18 % と外国人株主の約 23 % を合計しても過半数に達しないので、不足分を場で購入するように促したか覚えていない
    • 村上被告と堀江被告は、ニッポン放送の経営権掌握後について山賊の分捕り合戦のような掛合漫才をした
      • 村上被告「フジテレビは要らない」
        堀江被告「フジテレビ欲しい。ポニーキャニオンも。産経新聞はどうでもいいや」
        村上被告「サンケイビルはうちにくれ」
    • (「供述調書に、「『資金調達の話もあったが、額は出なかった』とある」との検察側に対し)資金調達の説明はなかっただろう
      • 村上被告が「金融機関を紹介する」と言ったか覚えていない
    • 「村上ファンドが他に売却しない契約をしてくれ」と言われたが、村上被告が一蹴した
      • 発言したのは、塩野氏だと思う
      • ライブドアがニッポン放送を買収するのは夢物語に過ぎず、ファンドに対して失礼
    • ライブドアはリップルウッドよりも信用できない、と不愉快に感じた
      • ライブドアにも伝わっただろう
    • 塩野氏の勉強会のような打合せだった
      • 塩野氏の勉強会に、堀江被告・宮内被告・村上被告・証人が揃っても不自然ではない