「ニッポン放送を買収する意思は伝わった」村上ファンド事件証人・塩野 誠氏への検察側主尋問
証人の経歴
- 平成 15 (2003) 年 4 月に、オン・ザ・エッヂ(現・ライブドア)に入社
- M & A やプライベート・エクイティに関する業務に従事
- 平成 17 (2005) 年 2 月 8 日に、ライブドアが「ニッポン放送株の約 35 % を取得した」と発表したときの担当者
ニッポン放送の買収
- 最初にニッポン放送の案件を聞いたのは、平成 16 (2004) 年 9 月 15 日
- 宮内 亮治被告(ライブドア元取締役)に聞いた
- 当時、宮内被告はライブドアの取締役および最高財務責任者 CFO であり、M & A も統括していた
- 場所は、六本木ヒルズのオフィス内
- 中村 長也被告(ライブドアファイナンス前社長)も同席していた
- 宮内被告は、「ニッポン放送を梃子にして、フジテレビまで行く」と言っていた
- ニッポン放送株を取得して経営権を掌握することによりフジテレビ株を支配してフジテレビを買収する、と理解した
- 宮内被告は、「トリイ ジュンコ(表記不明)氏(M & A コンサルティング元社員)と連絡を取り、買収スキームを立案せよ」と証人に指示し、中村被告には資金調達を命じた
- トリイ氏は、大学時代の友人
- 「堀江 貴文被告(ライブドア前社長)も了解している」と聞いた
- 議決権ベースでニッポン放送株の過半数をライブドアが支配するために、村上ファンドが 20 % 弱を取得しているので、ライブドアは 1/3 を取得する、と認識した
- 1/3 という数字には、2 つの意味がある
- 村上ファンドとの合計が過半数
- 特別決議の拒否権を持てる
- 「村上ファンドのプロキシー・ファイトに参加するために、1 〜 2 % を所有する」とは聞いていない
- 宮内被告に、「極秘」と言われた
- ニッポン放送が有名上場企業なので、株価高騰を防ぐため
- ニッポン放送買収はライブドアの会社としての意思である、と受止めた
- 堀江被告と宮内被告の 2 人から指示を受けたら、役員会で翻ることはないから
- 9 月 15 日以前から、堀江被告にはテレビ局買収の意思があった
- メディア買収に関心があり、平成 15 (2003) 年には衛星関連のテレビ局の買収を検討したことがある
- 宮内 亮治被告(ライブドア元取締役)に聞いた
- 宮内被告から指示を受けた直後に、トリイ氏に連絡した
- 平成 16 (2004) 年 9 月 15 日 13 時 15 分のトリイ氏へのメールが、最初の連絡
- 17 時 29 分のトリイ氏から証人へのメールに、「面白いゲーム」とある
- ニッポン放送買収を指す
- 17 時 55 分のトリイ氏から証人へのメールに、「村上にはパートナーがいるよん」とある
- トリイ氏は窓口であり、証人からの連絡を村上 世彰被告(M & A コンサルティング前代表)に伝える
- トリイ氏には証券アナリストという背景があったので、その知見を借りようと思った
- 他の買収案件と同様に、有価証券報告書の閲覧などの情報収集を開始した
- 9 月 15 日の数日後に、「N 社について」を手渡された
- 9 月 18 日に、宮内被告と中村被告へメールを送信した
- 「フジテレビの件をトリイ氏と話したところ、先方はキャッシュインのタイミングと買収した際にライブドアにどこまでやらせるかを議論中のようです」とある
- 「キャッシュインのタイミング」とは、ニッポン放送株の売却益を得る時期
- ライブドアと村上ファンドが協力してニッポン放送の経営権を取るが、村上ファンドはいつまで株を保有するか
- 「議論」には村上被告も参加している、と思った
- 「先方も、それほど急いではいないようです」とある
- いつまでという話がなかったから
- 平成 17 (2005) 年 3 月末の株主基準日まで、と証人は考えていた
- 「ライブドア側の資金調達と合わせて、買収スキームを詰めていきます」とある
- 中村被告と連携を取っていく
- 「フジテレビの件をトリイ氏と話したところ、先方はキャッシュインのタイミングと買収した際にライブドアにどこまでやらせるかを議論中のようです」とある
- 平成 16 (2004) 年 9 月 22 日に、宮内被告から証人へメールが返信された
- 「ニッポン放送株をブロック・トレードで 20 % 取得」とある
- 機関投資家から購入する
- 20 % は当面の数字で、最終的には過半数を取得して連結子会社化する
- 「フジテレビに TOB されれば、それに応じる。どちらに転んでも損はしない」とある
- 「ニッポン放送のアセットを使って、フジテレビを取得する」とある
- 最終目標
- 宮内被告が乗り気でなければ、指示は来ない
- 村上ファンドがニッポン放送株を他に売却するのを防ぎ、ライブドアが本気であることを示唆することが、証人の重要な役目
- 「ニッポン放送株をブロック・トレードで 20 % 取得」とある
- トリイ氏へのメールに、「N 社のテレビ放送業界における展望」というファイルが添付した目的は 2 つ
- ライブドアが事業展開を考えていることを伝える
- 展望への助言を受ける
- トリイ氏から証人へメールが返信された
- ライブドアがニッポン放送を買収することは、村上ファンドに伝わっただろう
- トリイ氏へのメールに、「ディスカッションしたいね」とある
- 10 月 5 日 18 時に会って、ニッポン放送の株主状況と財務状況について協議した
- 財務状況については、「ニッポン放送 4660 メモ」「フジテレビジョンメモ」という資料の一部を見せられた
- 村上ファンド内の調査資料だろう
- 内容は信頼できるだろう
- 「機関投資家が、ニッポン放送株を売る」という話もした
- 資金調達については、中村被告に聞いていた通り「300 億円くらいは用意できるんじゃないか」と伝えた
- 10 月 5 日 18 時に会って、ニッポン放送の株主状況と財務状況について協議した
- 10 月 8 日 18 時 59 分に、堀江被告と宮内被告へメールを送信した
- Cc: で中村被告にも送信した
- 「フジテレビの件ですが、MAC の担当者と話をしました」とある
- 10 月 5 日の打合せを指す
- 「ニッポン放送株をブロックで買取可能なので、買収に入りたい。買取先は鹿内家と銀行で、合計 18.74 %(約 320 億円)」とある
- 10 月 5 日の打合せを踏まえた記述で、トリイ氏の資料に基づいて計算した
- 約 320 億円は、時価総額の 18.74 %
- 9 月 22 日の宮内被告から証人へのメールの「ニッポン放送株の 20 % をブロックで取得」を受けて 18.74 %
- 鹿内家と話をすることは必須
- 銀行は、株式持合解消の動きから当たってみるべき
- 鹿内家と銀行に限定しているのではなく、ライブドアの名前を出さずに証券会社を通じて打診して買うことにやぶさかではない
- このメールの目的は、以下の通り
- ニッポン放送の株主と話を始めさせてほしい
- 村上ファンドと共同戦線を張る契約を締結していいか
- 村上ファンドが、他の会社やファンドにニッポン放送株を売却しないようにする
- 議決権を含む
- 村上ファンドに、機関投資家を紹介してもらう
- 村上ファンドが、他の会社やファンドにニッポン放送株を売却しないようにする
- 10 月 8 日に、堀江被告は「気持ち良く行って下さい。最優先です」と返信した
- ライブドアの業務として承認された
- 「了解しました」と返信した
- 堀江被告へのメールで、トリイ氏に聞いた日興証券のアナリストからのヒアリングを報告した
- 堀江被告は、「いいですね。これが来年最大のディールになりますね」と返信した
- 堀江被告は非常に積極的で、宮内被告も賛同していた
- 「ネットとメディアの融合」とは「インターネットとテレビの融合」を指し、フジテレビが最終目標だった
- フジテレビの議決権の過半数を取れればベストだが、フジテレビのインターネット事業を担うだけでもいい
- 10 月 8 日の堀江被告のメールから 11 月 8 日の村上ファンドとの打合せまで、しばらく掛かった
- 堀江被告と村上被告のスケジュールが合わなかった
- 中村被告の資金調達の目途が立たなかった
- 資金調達はライブドアが本気であることを示し、打合せを意味あるものにするためのお土産
- 10 月 20 日に、トリイ氏へメールを送信した
- 「買収資金の借入が可能になりました。早急に打合せを開きたい、と思います」とある
- 中村被告に、「300 億円はできる」と聞いた
- 200 億円のコミットメントラインと 100 億円の現預金
- 中村被告は銀行に対する交渉力が非常にあるから、320 億円に見合う資金調達の目途がついた、と信じた
- 「弊社社長から急がされています」とある
- 堀江被告に、打合せなどで聞かれていた
- 打合せの目的は、資金調達可能であることをトップから伝え、ニッポン放送買収を本格的に開始すること
- 堀江被告秘書のアイザワ(表記不明)氏へのメールに「堀江被告じゃないと駄目」とある通り、トップどうしが出席しないと意味がない
- 村上被告も分かっていただろう
- 「買収資金の借入が可能になりました。早急に打合せを開きたい、と思います」とある
- 10 月 20 日 11 時 43 分に、トリイ氏から証人へメールが送信された
- 「上に上げていますので、お待ち下さい」とある
- 打合せの日程調整のこと
- 「上に上げていますので、お待ち下さい」とある
- 10 月 29 日に、トリイ氏へ「トップが会う前に、1 回会いませんか?」とメールを送信した
- 11 月 4 日 15 時 30 分から 16 時 30 分まで、M & A コンサルティングで会った
- 中村被告に聞いた「200 億円のコミットメントラインと 100 億円の現預金」の話もした
- 共同戦線の話もした
- どの案件でも、トップ会談を意味あるものにするため、先に実務者が会う
- 11 月 4 日 15 時 30 分から 16 時 30 分まで、M & A コンサルティングで会った
- 11 月 5 日に、トリイ氏から証人へメールが送信された
- 「資料の通り、うちとうちと仲良くしている外人から 3 割は取れるイメージです」とある
- 資料とは、「N 社について」のこと
- 村上ファンドとサウスイースタン・アセット・マネージメントとピーター・キャンディル・アンド・アソシエイツで 3 割
- (「3 割を取得するのは、ライブドアか村上ファンドか?」との検察側に対し)ライブドアに同調するのが 3 割
- ライブドアが購入するのではなく、議決権を取れるのが 3 割
- ライブドアは、別に 20 % を取得する必要がある
- 「その他、取れるところは 8 日に滝沢が説明します」とある
- 同様に議決権のことだが、ニッポン放送株を購入する相手も紹介される、と思っていた
- 「資料の通り、うちとうちと仲良くしている外人から 3 割は取れるイメージです」とある
村上ファンドとの打合せ
- 11 月 8 日に、村上ファンドと打合せを行った
- 15 時 30 分から M & A コンサルティングの会議室にて
- ライブドア側の出席者は、堀江被告・宮内被告・中村被告・証人
- 村上ファンド側の出席者は、村上被告・滝沢 建也氏(M & A コンサルティング副社長)・石井 賢史氏(M & A コンサルティング取締役)・トリイ氏
- 当時、宮内被告は取締役を辞任していたが、証人から見て M & A を統括している立場に変化はなかった
- 主に、村上ファンド側は村上被告が話し、ライブドア側は堀江被告が話した
- 村上被告は、主に堀江被告に話した
- 資料は、5 ページの「N 社について」
- 6 ページの「対象方針案」は、取調べまでに見たことがなかった
- ライブドアのニッポン放送の経営権掌握を前提とした話も出た
- ポニーキャニオンやサンケイビルについて
- 村上被告が「ポニーキャニオンを経営したがっている経営者がいる」と言うと、堀江被告は「自分が経営したいから待ってくれ」と答えた
- サンケイビルは、村上被告が欲しがっていた
- ニッポン放送やフジテレビの経営について
- 堀江被告が、「自分が経営すれば、もっと良くなる」と述べた
- ポニーキャニオンやサンケイビルについて
- ライブドアは、ニッポン放送を 20 % 以上取得することになっていた
- 5 % 未満を取得して村上ファンドのプロキシー・ファイトの一員になる、ということではなかった
- 堀江被告が「年内に TOB させてくれ」と言うと、村上被告は「ちょっと待て」と答えた
- 時期尚早ということだろう
- プレミアムの話も出ただろう
- 堀江被告が「資金調達できました」と話し始め、宮内被告と中村被告が説明した
- 200 億円のコミットメントラインと 100 億円の現預金
- クレディ・スイス銀行と交渉している話もした
- 村上被告が何と答えたか覚えていないが、「分かった」「了解」などと言ったかもしれない
- 資金調達の目途が立ったことは、村上被告に伝わったと思われ、会議の目的は達成された
- 滝沢氏が、「サウスイースタン・アセット・マネージメントやピーター・キャンディル・アンド・アソシエイツと話をすることは可能」と言った
- ライブドアが購入するのであれば紹介する、という意味だろう
- 滝沢氏はやる気がなかった、という印象はない
- 村上被告が、「外国人投資家は売るだろう」と言った
- サウスイースタン・アセット・マネージメントやピーター・キャンディル・アンド・アソシエイツを挙げたか分からない
- 村上被告が、「鹿内家と以前からコミュニケーションしているので、紹介する」と言った
- 宮内被告が「共同戦線を張る紙を巻けませんか?」と話すと、村上被告は「それはできないが大丈夫だ」と答えた
- ライブドアと村上ファンドが全面協力する契約を結びたい、という意味
- 契約せずに進む M & A もあり、トップどうしが面と向かって話したのであれば信用できる
- 堀江被告が、「頑張りますので、よろしくお願い致します」と村上被告に言った
- ライブドアがニッポン放送株の 20 % や 1/3 を取得することは伝わっただろう
- ライブドアが、ニッポン放送を買収する意思を示すための打合せだった
- 村上ファンド側は、「ニッポン放送株を購入する」とは言わなかった
- 証人は、村上ファンドによる買増しを期待していなかった
- 打合せ終了後、堀江被告は「どんどん進めよう」と以前と変わらなかった
